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一つの可能性として人は、どこまで進化できるのだろうか?
そんな疑問がいつも火野明の脳裏にこびりついていた。
火野は、今回の怪奇事件について今までに無い不可解さを感じている。
普通の人間では、考えられないような事がこの事件では、いたるとこに見られるのである。
火野は、好奇心から週刊ターズデイの記者という枠を離れ探偵の様な気分で事件を調べていた。
その事をあの女編集長に釘を刺されたのだ。
火野は、今とある街中の喫茶店に来ていた。
目立たない角の方の席に座り、じっと人を待っているのだ。
待っているのは、火野に情報を提供してくれる協力者である。
火野が一杯のコーヒーを飲み終えたところで一人の若い青年が近寄ってきた。
「火野さん、待ちました?」
「ああ、15分くらいか」
火野は、腕時計を見た。
そして、背広の内ポケットから何か分厚い封筒に入った物をテーブルの上に置いた。
やって来た青年は、おもむろに火野の正面に座りこんだ。
この青年は、久我一郎と言う名前で職業は、検死官である。
それも連続吸血鬼殺人事件の死体を何度も見てきた人であるのだ。
久我は、こづかい稼ぎのつもりで検死結果の情報を火野明に売っていたのだ。
「これは、この前の情報提供料だ。受け取れ!」
火野は、分厚い封筒を久我の方へ滑らせた。
久我は、にんまりと笑みを浮かべると分厚い封筒を背広の懐にしまいこんだ。
「今回は、良い情報があるだが!聞きます?」
久我がそういうと火野は、身を乗り出した。
「とりあえず、聞いてからだ。聞いて面白い情報なら買ってやる!」
「ええ、もちろんですとも!」
久我は、そう言うと声をひそめて良い情報とやらを火野に語りだした。
最近、新しい被害者の死体を検死してると、長い髪の毛が付着してるのが見つかったと言うのである。
しかもその髪の毛を分析してみると16〜20歳ぐらいの女性の髪の毛だということがわかった。
「じゃあ何か?犯人は、女性とでも言うのか?」
「わかりません!ただ、男を力ずくでねじ伏せる事のできる女性なんてそうそう居ないでしょうね!」
久我のその言葉に火野は、頭を抱えこんだ。
また、わからなくなった。謎が一つ増えただけだ。
それが火野の素直な気持ちだった。
「ふっ・・・この街にどのくらいのマッチョの女性がいるか当たってみるよ!」
「まあ、頑張ってください!ところで、この情報買っていただけるので?」
久我が嬉しそうな顔で聞くと火野は、笑みを浮かべながら中指を立てた。