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日が地に落ちて暗闇が街を覆い尽くしている。
夜空には、自分の存在を誇示せんとばかに輝く大きな月。
今夜は、満月である。
一人の少女が満月の夜になると、自分自身の恐怖に怯え、苦しい喉の渇きにのたうちまわる。
そして、飢えた狼の様に瞳をランランと輝かせて街中へ消えていく。
火野明は、その満月の夜に小さな公園の茂みに身を潜めていた。
満月の夜に現れるだろう吸血殺人犯を待っているのだ。
火野は、当てずっぽうでこんな所を選んで待っているわけではない。
ちゃんとした計算からだ。
犯人は、決まって人気のない広場や公園を近道をしようと通りかかった人を襲っている。
それに一度犯行を行った場所で二度目の犯行をしないのだ。
たいした用心深さである。
だから、火野は、犯人が犯行を行った広場や公園を地図に塗りつぶして行き、残った場所で
最も犯行を犯しやすい場所を選んで張り込んでいるのである。
しかし、そんなに簡単に火野の前に犯人が現れるはずもなく。
火野の腕時計の針は、夜中の2時を指そうとしていた。
「ちっ・・・今夜も駄目かな・・・・」
カメラを片手に火野は、茂みから公園に人が来ないかと静かに待っている。
しばらくして、ふとゆらゆらと酔っ払いの中年男が公園内に入ってきた。
火野は、その男を注意深くカメラのファインダーを通して観察を始めた。
すると、もう一人の小さなな影がゆらりとその中年男の背中にせまった。
火野の予想が当たったのだ。
あの連続吸血殺人犯が火野の前に現れたのである。
火野は、無我夢中でカメラのシャッターを押した。
パシャ・パシャ・パシャ
カメラのシャッター音が鳴り響く。
それと、同時にフラッシュが光った事で連続吸血殺人犯は、火野明の存在に気づいた。
ものすごいスピードで小さな黒い影が火野の目前にせまった。
自分の前に現れたそれに火野は、愕然とした。
予想などしていなかった姿だった。
そして、あまりにも衝撃的な姿だった。
彼の目の前には、パジャマ姿の少女が立っていた。
歳は、16、17歳っと言ったところ。
大きな満月の月明かりに映し出された少女の顔は、何かに飢えた獣のようだ。
その金色に光る瞳には、火野明の顔がくっきりと浮かびあがっている。
火野は、そんな殺人犯の姿を見て息を飲み込んだ。
「きっ・・き・・君は・・・」
火野が声にならない声を出した。
すると突然その少女が火野に襲い掛かってきた。
すばやく伸ばした少女の右手が火野の首を捕らえ、息が出来ない苦しさに火野は、あばれた。
それでも少女は、信じられない力で首を絞めつけ、片腕だけで火野の身体を宙に浮かした。