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ルナティック・ダウンG 投稿者:Й 投稿日:1999年10月26日 14時07分
人は、本能と理性の狭間で絶え間なくもがき続ける。
人間社会と言う枠組みの中で抑えられている人の本能が覚醒する時が来るのだろうか。
理性だけの世界がやがてやって来るのだろうか。
欲望は、蠢き。暗闇は、心に巣う。
一人の少女の覚醒が人類の選択すべき未来の一つなのかもしれない。

火野明が警察の取り調べを受けて、開放されたのは、次の日の夕方頃であった。
根津と言う警察官に色々と聞かれたが火野は、たまたまあの現場に居合わせただけだと言う事で開放さてたのであった。
あの少女の姿を撮ったフィルムは、没収されたが火野は、気にしてる様子もなく真犯人を目撃した事の喜びに浸っていた。
それもそのはず、警察に渡したフィルムは、感光した暗闇しか写っていない偽物である。
少女の写ったフィルムは、ちゃんと火野のポケットに入っている。
火野は、根津の知らぬ間に擦りかえていたのだ。
火野にとっては、そんな事は、朝飯前で、フィルムを偽物にすりかえたりして見つかって没収されてもスクープをものにしていたのである。
後で警察から、「写ってない!」っと抗議の電話があるかもしれないがカメラが壊れていたんだと言えば言い逃れができる。
しかし、今回の事件は、連続殺人事件である。
いくら、スクープが欲しいからと言って、警察の捜査を遅らせる事など、本来なら火野は、したくはなかった。
だが、火野明はあの飢えに苦しみ悲しい瞳をした少女の姿を見てとても気になる事があるのだ。
このまま警察に捕まってしまう前に火野明は、もう一度逢ってみたいと思うのだった。

火野は、とりあえずこれから会社に顔を出そうと思った。
会社には、連絡していないがおそらく警察から会社へ連絡が入ってるはずである。
「フッ、編集長の説教でも聞きに行くか・・・・早く終われば良いな・・・」
火野は、そう呟き笑みを漏らすと会社に向かって歩きだした。
ここから、会社までそんなに遠くは、なかった。
歩いて行ける距離である。
ふと火野明は、交差点で自分の対面に居る横断歩道の前に居る3人の制服姿の女子高生に目をやった。
三人の女子高生の内、真ん中の一人だけが右腕を負傷してる様子で包帯が巻かれていた。
昨晩、火野が出会った少女が負傷した右腕と同じ場所である。
「・・・・まさか・・・な・・・」
火野は、そんな都合よくあの少女に出会えると思っていない。
この街で右腕を負傷している少女なんていっぱい居るはずだっと火野は、そう思った。
しかし、信号が青に変って歩き出し、女子高生達間が縮まっていくにしたがって火野は、自分の眼を疑いたくなった。
そして、火野はその女子高生の横をすれちがう時、思わず真ん中の女子高生の負傷した右腕を掴んでいた。
「え!?」
女子高生は、驚いたように悲鳴に似た声をあげた。
「似ている!似ているぞ!あの少女にそっくりだ!」
火野は、改めて女子高生の顔を睨み付けるように眺めた。
やがて、横断歩道の信号が青から赤へと変り、車のクラクションの音が火野明と少女の周りをぐるぐると回り始めた。