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ルナティック・ダウンH 投稿者:P! 投稿日:19100年05月17日 01時39分
驚き、恐怖、軽蔑、そんな感情がこもった眼差しが火野明を捕らえていた。
火野明と女子高生3人は、街中の大通りにあるおしゃれ喫茶店に来ている。
火野は、雑誌の取材だと言って女子高生3人をなっとくさせていた。
そして、わざわざ喫茶店まで連れてきたのである。
それでも3人の女子高生の不信感は、消えてない様子だった。
火野は、3人の女子高生の内の一人があの夜に出会った少女にそっくりだったので
思わずこんな所へ連れてきたのだが。
実際、彼女達を前にして何を話したら良いのか頭を悩ます火野であった。
「あっ・・あのう・・・私達に取材って?何を話したら良いんですか?」
ずっと黙ったままの火野に痺れをきらした様子で3人の内の一人、気の強そうな少女が口をひらいた。
喫茶店の角に火野に対面するように女子高生が3人座ってる。
右端には、気の強そうな子。真中には、あの少女とそっくりな気の弱そうな子。左端には、落着いた様子の子。
「あっ・・・いや、最近の女子高生の意識調査を行っていてね。今、一番興味がある事なんて教えてくれるかい?」
火野は、とっさにそんな嘘をついた。
何も考えずにこの少女達を連れてきた事を後悔していた火野だったがなんとなくその嘘で救われたような気持ちに
なった。
そのまま火野は、適当な質問を繰り返し。
少女達の個人情報を少しずつ引き出していく事に成功していた。
気の強そうな子は、名前は青山美奈、血液型は、A型。
あの少女似の子は、名前は松永朋子、血液型は、O型。
落着いた様子の子は、名前は山本冨美、血液型は、AB型。
みんな、この近くに在る成美女子高の生徒だと言う事だ。
そして火野は、それとなくその3人に自分の名刺を渡すと、彼女達と別れるのだった。

通っている高校の名前と個人名が分かればいくらでも後で調べる事ができるのを火野は、わかっていた。
情報化社会が生み出したひずみと言うやつかもしれないと火野は、思っている。
よく、学生の名簿などが企業間で売買される事がよくあるからだ。
顧客データなんてものも良く氾濫してる。今の時代、金さえあれば欲しい情報は、いくらでも手に入る。
プライバシーなんても在ってないようなものだ。

火野は、会社のオフィスに戻ってくると、同僚の佐伯に声をかけた。
「佐伯!ちょっと良いか?頼みたい事がある!」
佐伯と呼ばれる火野の同僚は、「最近の女子高生!!」っと言うテーマで特集を組む事になっている。
それを知っていた火野が佐伯に目をつけたのである。
「おいおい、冗談じゃないぜ!俺、忙しいんだからよ!」
佐伯は、さぞ不愉快そうに頭をかく。
「お前のためにもなる話しだ!」
火野は、冷静にそう切り出すと一方的に話しだした。
火野が佐伯に頼んだ事と言うのは、あの3人組の女子高生の身辺調査を行って欲しいと言うものだった。
最初は、渋ってた佐伯だが、火野の「今度の仕事を手伝ってやる!」の言葉に引きうける事にした。
今は、猫の手も借りたいほど忙しい佐伯にとっては、これほど魅力的なっみかえりは、ないだろう。

「コラー!!火野!!警察から戻ってきたなら、直ぐに私の所に来ないかー!!」
オフィスの中をウロウロしている火野を見つけて編集長のそんな叫び声が響きわたった。
火野は、編集長に見つかってしまった事に平然と彼女の前までやって来る。
「火野!?殺人犯の顔写真とったんだって?相変わらず無茶してるわね!」
長谷川裕子は、火野の顔を見てクスっと笑った。
「・・・・・」
火野は、その編集長の笑いが気に入らない様子で目を細めた。
「根津って警察官から電話・・・あったわよ!写真、何も写ってなかったって!」
「カメラが壊れていたんだ!」
火野は、少し声を上げてそう答えた。
そして、また長谷川裕子がクスッて笑う。
「まあいいわ!上手くごまかしておいたけどね、根津って警察官・・・あまり良い噂を聞かないわ!気をつけなさい!」
そんな編集長の言葉に火野は、苦虫を噛み潰したような顔をするのだった。
その火野をからかうように編集長長谷川裕子は、タバコに火を付けた。