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ルナティック・ダウンI 投稿者:P! 投稿日:19100年05月17日 01時41分
一つの感情が人を動かす力になる。
そんな事を火野明は、思いしらされていた。
あの少女との出会いが火野自身を狂わせたかのように。
火野は、あの少女にもう一度会ってみたいと思った。
そして、話しをしてみたいと。
昨日会った女子高生があの少女であるかは、わからない。
ただ直感的にそう思っただけだった。
あの大人しそうな女子高生が何人もの大人の男を殺してきたとは、とうてい思えない。
しかし・・・・・あの夜に出会った少女の顔をハッキリと覚えていたわけではないが
たしかに女子高生と良く似ていた。

あの後直ぐに女子高生松永朋子から火野へと電話がかかってきた。
名刺に書かれていた電話番号を見て書けてきたらしい。
今度は、火野と二人で話がしたいというものだった。
松永朋子からのもうしでは、火野にとって願ってもないチャンスだった。
逆に言うと松永朋子には、何か秘密があると言う事だろう。
でなければ、一度会ったばかりの人に二人で話をしたいなどと言うはずがない。
火野明は、松永朋子との待ち合わせ場所である大きな公園のベンチに深く腰かけていた。
そして、待ち合わせ時間丁度に松永朋子は、やって来た。
彼女は、黙って火野の隣に座りすぐさま口を開いた。
「・・・あの・・・・私・・・夢を見たんです・・・・」
たどたどしい声で話す彼女の話は、火野明を満足させるものではなかったが興味をそそられる
ないようであった。
第一、火野に電話をかけてきたのは夢で火野に良く似た人が出てきたからだと言うのだ。
日々リアルになっていく自分の夢に松永朋子は、恐れを抱き出したと言う。
現実離れした夢のないよう、それに伴ってリアルに思えてくる夢が恐ろしいと言うのだ。
夢のないようは、こうだ。
決まって満月の夜に喉が乾き、激しく首をかきみしる。
そして、むしょうに血が欲しくなるのだ。人の血が欲しくなる。
そんな夢を満月の夜にかぎって見るのだという。
「火野さん?火野さんは、まるで私の事・・・知ってるみたいでした。私・・・夢の中で
・・・火野さんの首をしめていたんです!」
松永朋子は、うつむいた。
彼女の手に落ちた涙が火野を困惑させる。
「だんだんとわかってきたんです。私が夢だって思っていた出来事は、・・・・
実際に起きた事じゃないかって思うようになったんです。そう思うと悲しくて涙が止まらない!
でも・・・確かめたかった!!そんな時に火野さんに出会って・・・何か知ってるんじゃないかって
・・・それで・・・・」
松永朋子は、そこまで言うと黙ったまま火野の瞳を覗き込むように見つめるのだった。
真実を教えて欲しいと言った顔である。
だが火野は、悩んでいた。
何をどう話して良いのかわからないのだ。
彼女の夢が現実だと言う証拠は、無い。
火野が言えるのは、あの夜の出来事ぐらいだが・・・。
「・・・・俺は、・・・満月の夜に君と良く似た少女に会った。君に声をかけたのは、それがあった
からだ!君が見た夢が現実の事だった言うんじゃない!まだ、わからない事だらけなんだ!
君が良ければ君が見た夢のないようを詳しくしりたいのだが・・・。それが君の為になると思う。
悪いようには、しない。」
それが今の火野に言える精一杯の言葉だった。
だが松永朋子は、戸惑いながらも頷いてくれた。
一人で悩んで、相当心細かったにちがいない。
そして、次の満月の日に再び会う事を約束して、火野は、松永朋子とわかれた。
そのまま一人公園のベンチに残った火のは、考えを巡らせるために深く背もたれに倒れて空を見上げた。
「いったいどうなってるんだ!!あの少女と松永朋子は、別人のように感じる。顔は、よく似ていた。
彼女が言う夢も気になる!!」
火野は、そんな風に悩み、考えていると、突然腹部に強い衝撃と痛みを感じた。
「うっ・・なっ・・・なんだ?」
火野は、気を失いそうになったが直ぐに正気に戻ると目の前に居る人物に目をやった。
デップリと腹が出た中年男が火野が気付かぬ間に目前に立っていたのだ。
火野が自分の腹部に強い衝撃と痛みを感じたのは、この男が腹を殴ったからだ。
「クッ・・・・お前は、根津宗次郎・・・・」
火野は、そう呟いて刑事根津を睨みつけた。
「・・・・探したぜ!!火野明!!」
根津は、凶悪な顔を向けて叫んだ。
「あのフィルムには、何も写って無かったぜ!!どういう事だ?」
「言っただろ?カメラが壊れてたんだってな!!」
火野の返した言葉に再び凶悪な表情を浮かべて根津は、両手で素早く火野の首を掴んだ。
まさに首を絞め殺そうとする勢いである。
「なっ・・・なんだコイツ・・・・まじかよ・・・本当に刑事か?」
火野は、じょじょに自分の首を締め上げる根津の姿に大きく目を見開きそう心の中で叫んでいた。
「そんな、言い訳がーっ!!通じると思ってるのか?」
根津は、激しく叫ぶ。
火野は、激しくもがき苦しみ、何度も根津の腹を蹴飛ばしたがびくともしない。
「殺される!?」
火野は、薄れ行く意識の中で叫んでいた。
つづく