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ある蒸し暑い真夏の夜、僕は見たんだ。
大きな光が夜空を駆抜けて西の空へ消えていった。
そして、僕は光を追いかけた。
僕がまだ8歳で真夏の夜の出来事だった。
その日から僕は、一つの感情を失った。
そして8年後、僕が16歳になった真夏の夜にもう一度あの光を目撃する事になる。
僕の名は、神戸隆と言う。
早朝、毎日コンビニによってから学校へ向かうが日課になっていた。
いつも立ち寄るコンビニで隆は、意外な人物を目撃した。
品田ゆい。
同じ学校の同じクラスの女の子だ。
彼女は、隆の学校では、ちょっとした有名人だった。
クラスの皆は、何を考えているのかわからないと言って彼女は、浮いた存在だった。
彼女自身もそんな周りの事に無関心な様子だった。
それでいて気の強い所があって、キャシャな身体で同じクラスの男子生徒を殴り飛ばした
などという数々の逸話を残している。
隆が見た感じでは、不良って感じではなく、どちらかと言うとまじめな感じを受けていた。
そんな品田ゆいが早朝のコンビニに居る。
何かを探している様子で店内をウロウロしていた。
隆は、彼女に声をかけようとしたが少し様子が変なのでやめた。
別に何が変と言うわけではなく、何かを買うと言う意志が感じられないが隆にそう思わせたのだ。
隆がペットボトルを手に取って、ふと品田ゆいを見た。
「えっ・・・・!?」
隆は、驚いた。
今たしかに信じがたいものを見たんだ。
自分の肩から下げている手提げカバンに品田ゆいがコンビニの商品を素早く投げ入れたのだ。
隆は、すぐさま店員の姿を探した。
店員は、レジの向こう側でけげんな顔つきで品田ゆいを見ていたのだ。
「あいつ・・・・つかまるぞ・・」
隆は、そう心の中でつぶやくとすぐに品田ゆいの側に向かった。
バシ
隆は、手提げカバンに手を入れた品田ゆいの右手を掴んだ。
「それ・・・買うんだろ?」
「神戸・・・・君?」
品田ゆいは、驚いて隆の顔を見た。
「もういいだろ?離せよ!」
品田ゆいは、そう叫んで隆に掴まれていた右手を引き離した。
コンビニから少し離れた歩道の往来で隆と品田ゆいは、向き合っている。
「品田!わかっているのか?あのままじゃ捕まっていた!」
「ああ、わかってる!わかってる!わかってる!かってな事したよな!」
品田ゆいは、腹を立てているのか、隆に向かって叫んだ。
隆は、少し不愉快な思いをしたがだまって品田ゆいの顔を見る。
「ぼくは、ただ・・・・・」
「私は、・・・・あんたみたいな偽善者が大嫌いなんだ!あんたと話す事なんて何もない!」
品田ゆいは、隆の声をかきけすように叫んで走り去ってしまった。
隆は、そんな彼女を呆然と眺めるだけであった。
つづく